Magazine

Refresh Magazine リフレッシュWEBマガジン

人は、一日のさまざまな瞬間にリフレッシュを求めている。
ミンティアは、ひとりひとりに寄り添って、その一瞬一瞬を応援したい。
読み終わったとき、リフレッシュしたあなたが、また前を向いてがんばれるように。
Refresh Magazineは、ミンティアからあなたへの小さなエールです。

自分らしくいたい

2017.8.10

会社員から美大教授へ!宮津大輔さんに聞く「好きなこと」と「仕事」のイイ関係

「24時間、好きなことに没頭して暮らせたら…」と考えたことはありませんか?今回はそんな理想を現実にした、アート・コレクターで大学教授の宮津大輔さんにお話を伺いました。一般企業の会社員からアートの世界へ。その異色とも言える経歴から、「好きなこと」との向き合い方、自分らしく生きるヒントを教えていただきました。

始まりは、30歳の時ボーナスで購入した1点。

■アート・コレクターになったきっかけとは?

最初はコレクターになろうなんて考えは、全然なかったんですよ。初めて作品を購入したのは、30歳の時でした。当時は広告代理店に勤めていたのですが、大変な仕事にも少しずつ慣れてきて、サラリーマンとしてなんとかやっていけそうだなと思えた頃だったんですよね。夏のボーナスで何を買おうかな?と考えた時に、「好きなアーティストの作品を買いたい」と思ったんです。それで、以前から大ファンだった草間彌生さんの作品を購入しようと決めたのですが、アート業界にコネクションもないし、そもそもどこで買えるのかもわからなくて。とりあえず草間さんの作品を展示している美術館に直接電話で問い合わせてみたんです。ほとんど門前払いばかりでしたが、なんとか購入できるところを教えてもらえて。10点ほどの作品の中から、自分が「これだ!」と感じた1点を即決で購入しました。夏のボーナスだけでは足りず、冬のボーナスも全額充てることにはなったのですが(笑)。1点所有してみると、ギャラリーや美術館でのガラスケース越しで短時間の鑑賞では気づけない、作品のさまざまな表情を愉しめるということに魅せられて。もっと草間さんの作品が欲しいと思い、2点、3点とコレクションが増えていったんです。

■どのような視点で、作品を選ばれているのでしょうか?

僕は、いつも即決なんですよ。秒速ですね。個人が作品を購入する時って、自分の家に飾ることを前提に、壁の大きさやスペースに合わせて作品を選ぶことが多いですよね。でも、僕は考えない。自分の家のためとか、そういうところから離れた視点で「良いと思った作品」を買っています。自分の好きなものを、迷わず秒速で買えるようになるためには、実は訓練が必要なんですよ。サッカーや野球など、試合に出てない選手が急に試合に出ても良いプレイができないのと同じような感覚ですね。意識的に場数を踏まないと、瞬時の判断をすることはできません。
いい作品を見極めるための訓練とは、とにかく優れた作品をたくさん目にすることだと考え、現代アートに関わるあらゆる展覧会に通いました。そのうち「宮津というおもしろい若手コレクターがいる」と業界の方に言っていただけるようになって、32歳の頃には「アート・コレクター」と周りの方から認識されるようになっていました。現在400点ほどの作品を所有していますが、失敗したなとか後悔したと感じたことは1度もないですね。

アートが仕事を、仕事がアートを支えてくれた。

草間彌生「無限の網」(1965年)と一緒に。
(C)YAYOI KUSAMA Courtesy of Ota Fine Arts
協力:寺田倉庫株式会社

■会社員とアート・コレクター、両立は大変だったのでは?

確かに時間的、肉体的には厳しかったです。でも、何と言っても自分の好きなことですからね。それに、サラリーマンの仕事とアート・コレクターの活動って、スポーツで言うと全く違う筋肉を動かすみたいな感じで。サラリーマンとして働いていると、100%自分の判断だけで何かを決めるということはなかなかないじゃないですか。例えば、すごく良い企画ができたと思っても上司の承認が下りないと実現できなかったり、クライアント、製作会社など関わる人たちそれぞれの立場で異なる考えがあって、ディスカッションしながら合議で進めていく。一方、アート・コレクターというのは、自分が良いと思う作品を自分で見極めて購入を決断していくものです。それぞれ違う能力を使う活動だからこそ、肉体的にはきつくても精神的にはとても元気でいられたんだと思います。

■アート・コレクターとしての活動が仕事に影響を与えることはありましたか?

仕事というのは、基本的に辛いことがたくさんあるじゃないですか。でも、その度「この経験がアート活動で何かの役立つかもしれない」、そう考えることで乗り越えてきました。
金銭的な部分も大きかったですね。僕は資産家でも何でもなく、会社からもらうそれほど多くはない給料やボーナスをつぎ込んで作品を購入してきたので。勤めていた会社が買収されて環境が変わるなか、去っていく同僚たちもたくさんいましたが、僕は「今辞めたら画廊への支払いができなくなる!」と(笑)。好きなアートのことを考え続けることが、辛い仕事を続ける原動力にもなっていました。
それに、変化の激しいIT業界に勤めていたことで、「新しいこと」を受容する態勢ができていたことも、アート・コレクターとしての活動に良い影響を与えていた部分もあります。他の人が買わないようなエッジの効いた作品でも、自分が良いと思えば抵抗なく購入してきました。そうした、まだ新しい作品というのは、うれしいことにそう高額でないことが多いですしね。

「好きなこと」は、人生を助けてくれる。

■宮津さんが考える「自分らしさ」とは?

「自分らしさ」って、なかなか一言で表現するのは難しいですよね。多くの方が、自分らしさとは何か、気づけていないかもしれませんが、必ずそれぞれに何か一つはあると思うんです。例えば、この1週間・1年間の自分がどんなことをしていたか振り返ってみると見えてくる部分もあるのではないでしょうか?僕の場合は「“24時間アート馬鹿”なんだなぁ」とか、これまでの自分のやってきたことを振り返ってみると認識できますよね。そうして見えてきた自分を認めて、卑下せず自信を持って物事にあたることが大切だと思います。

■「好きなこと」があるというのは、強みと言えますか?

仕事や生きがいって、必ずしも1つでなくても良いと思うんです。僕の場合は2つでしたが、3つでも4つでも良いじゃないですか。好きなことをやって人生を2倍生きると、一方が他方を必ず支えてくれますから。
例えば、会社で思うように活躍できなくても、少年野球の監督として「監督の素晴らしい指導のおかげでうちの子は生まれ変わりました!」なんて評価や感謝をされたらうれしいし、そこには会社員の自分とは違う別の人生があるわけじゃないですか。勿論、その逆もあるでしょうし。
少年野球の監督だったり、山登りだったり、自治会のお掃除だって、ビジネスにつながってなくても良いと思うんです。土日は誰だって寝ていたいし、テレビを観ていたら1日はあっという間に終わります。でも、好きなことに一生懸命になってみませんか?一生懸命やった「好きなこと」は必ず人生を助けてくれますよ。

(プロフィール)宮津大輔
アート・コレクター、横浜美術大学教授、京都造形芸術大学客員教授。
1963年東京都出身。広告代理店、上場企業の広報、人事管理職を経て現職。1994年以来企業に勤めながら収集したコレクションやアーティストと共同で建設した自宅が、国内外で広く紹介される。文化庁「現代美術の海外発信に関する検討会議」委員、「Asian Art Award 2017」審査員等等を歴任。著書に『アート×テクノロジーの時代』『現代アート経済学』(以上、光文社新書)や『現代アートを買おう!』(集英社新書/中国・金城出版/台湾・Uni Books/韓国・ArtBooks)等がある。

記事に対するコメント・シェアはこちらから

その他のオススメ記事はこちら

リフレッシュマガジントップへ

Share

  • facebook

News